DecaBDEの処遇予想

先日、OctaBDEがPOPs指定になった後のDecaBDEについては、日本ではどのような対処がなされるかを書いた。http://d.hatena.ne.jp/d08hf007/20081106/1225956487
それについて、化学物質規制に詳しい方からのご意見をいただいた。
それによると、同様の事例がすでに起こっていたということである(確かに、亀屋先生の授業でやったなぁ)。
ヘキサクロロベンゼン(HCB)がテトラクロロ無水フタル酸(TCPA)に不純物として含まれていたという事例。
自動車のヘッドランプのプラスチックカバーからHCB(化審法第一種特定化学物質)が検出され、大きな騒ぎになった(用途と濃度から考えると、ヒトに健康被害を及ぼすほどではなかったことが後日判明してはいる)。確か、TCPAはヘッドランプの顔料としてエッセンシャルユースがあった。
この問題に対処するために、非意図的な不純物として、HCBにはBAT(利用可能な最良の技術)という新しい考え方が適用された。その考え方に基づき、当該省庁(環境省経産省)は「工業技術的・経済的に可能なレベル」を設定することで、現実的に削減可能なレベル以下でHCBの混入を抑制する対応をとった。ハザード管理では無理がある、ゼロリスクを目指すには多大な労力と費用がかかるということの表れだろう。まだリスク管理ではないのだろうけど、第一種特定化学物質に対するリスク管理は、そこにそれ相応の大きなベネフィットがない限り(もしくは完全閉鎖系=外部から完全にシャットダウンした中で使用するという保障がない限り)難しいと思う。
DecaBDEもTCPAと同様に、その中に含まれている不純物量を少なくし純度を高めるための対応なされるだろうが、今後このような(コスト的に)適切な代替物質が見つかっていない化学物質を規制する際の対応には、化審法には大きな課題があるといえるのではないか。
DecaBDEの代替については後日書きたいが、現在のDecaBDEの用途分野においてコスト対効果的に、DecaBDEほどの難燃パフォーマンスを示す難燃剤は見つかっていない。つまり、現在のDecaBDE代替騒動は、消費者にコストという形で跳ね返ってきている。今はまだDecaBDEだけだが、産業界全体がこのような傾向に陥ると、我々はコストという有限な資源をより浪費することになる。
HCBへの環境省の対応:http://www.meti.go.jp/press/20060317007/taiou-set.pdf