REACH規制が次のステップへ進み始める ただし,HBCDの規制優先度に関して懸念あり

ECHAより,REACH許認可対象物質リストに収載すべき最初の7物質について,EU加盟国が合意したとのプレスリリースが出ていた(2009年5月26日)。

First Substances of SVHC Move One Step Closer to Tighter Control
http://echa.europa.eu/doc/press/ni_09_07_first_svhc_20090526.pdf

高懸念物質のうち,許認可対象物質リストに収蔵すべき最初の化学物質がいわゆるREACH許可対象物質リストに初めて追加された。今後,次々と化学物質がこのステップへと進むことになる。イメージとしては,日化協タスクフォースのスライドが分かりやすい。ココ

今回合意した内容は2009年6月1日にすでにEC(European Commission:欧州委員会)に提出されている。許認可リストへのリストアップの最終判断は,コミトロジー(Comitology)制度*1の下,厳正に行われる。この制度には欧州委員会とともに各国の官僚,専門家が主要な役割を果たしている。

7物質とは,
ムスクキシレンMDA(4,4`-ジアノミジフェニルメタン),SCCPs(短鎖塩素化パラフィン),HBCD,DEHP,BBP,DBP
である。

今回の決定で特に注目したいのが,HBCDへの特別配慮である。
というのも,ECHAのプレスリリースにも記載されているが,HBCDに対する現行の登録優先順位への疑問が記録されている議事録も一緒にして,ECに提出することを要求している(た)ようだ。なぜかというと,いざ登録が必要になった時に,断熱材として主に住宅に用いている,ポリスチレンボードの製造に携わっている中小企業が,とりわけ影響を受けることを懸念してのことだという。


そうなんです,現状で,ポリスチレンを使用する場合には,HBCDの代替物質がないのです。だったらポリスチレンを使わなければいい,という話になるかもしれないが,現在中小企業にそんな余裕はない。ここにもあった,リスクトレードオフ

*1:閣僚理事会での立法過程において、閣僚理事会の補佐を目的として各国の高級官僚によって構成される専門委員会を駆使して意思決定を行うメカニズム