ヘルスカナダ PBDEに関するファクトシート

食品安全ブログから以下,引用。いつもありがとうございます。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090917#p6

PBDE難燃剤とヒト健康
It’s Your Health
PBDE Flame Retardants and Human Health
http://www.hc-sc.gc.ca/hl-vs/iyh-vsv/environ/pbde-eng.php

 ポリ臭化ジフェニルエーテル難燃剤(PBDE)は、引火しにくくするために各種消費者製品に添加されている合成化合物である。最近メディアで北米のヒトや環境中のPBDE濃度が、低いながらも、一部のPBDEが禁止されているヨーロッパより高くて上昇傾向にあるということが報道されている。

背景

 PBDE難燃剤はプラスチックや電子機器、布張りの家具、衣服以外の布製品、発泡製品などに使用されている。添加されているPBDEは化学結合しているわけではなくただ添加されているので使用中や廃棄後に徐々に放出される。

 PBDEは環境中や母乳を含む人体から検出されている。ヒトでの濃度は極めて低いが時代とともに増加傾向にあり、北米の方がヨーロッパより高い。

 市販のPBDEはペンタBDE、オクタBDE、デカBDEの混合物のどれかで、多数の国や米国の州がペンタBDEとオクタBDEの禁止に動いている。北米の主要メーカーはこれら2種のPBDEの生産を2004年に止めている。環境への影響への懸念から多くの企業でPBDEの使用を止めており、さらに多くの企業がそれに続くと予想されている。スウェーデンでは使用や放出削減策がとられてすぐに母乳中のPBDE濃度が下がった。

PBDE暴露源

 PBDEはあらゆる環境中にごく微量存在する−空気や水、堆積物、室内の埃、食品など。環境中濃度に関するデータは限られるが、ヒトの主要暴露源は室内空気と室内の埃と母乳を含む食品であろう。食品の中では魚や肉や乳製品などの動物由来の脂肪の多い食品で濃度が高い。

PBDEの健康影響

 PBDEに暴露されたヒトでの研究では有害影響や疾患の増加についての明確な根拠はない。

 動物実験では神経系発達や行動、肝臓、甲状腺への影響が観察されているがこれらの実験ではカナダでヒトが暴露されている濃度より遙かに高い濃度を使っている。

 実験動物で発がん性がある可能性については極めて限られた根拠しかない。一つの実験で、極めて高濃度のデカBDEを投与したラットで肝腫瘍の発生が増加したが、この濃度は上述の行動や肝臓や甲状腺への影響が出る濃度の何倍も高い。

リスクを最小化する

 もし家族のPBDE暴露が心配なら、以下の方法を検討するといい

・ 一部の製造業者はPBDEを使用しない製品を作っている。ウールなどの繊維はもともと難燃性である。

・ PBDEは脂肪組織に蓄積されるので脂肪の多い食品を食べる量を制限する。カナダの健康的食生活ガイドに従って多様な低脂肪食品を楽しむ

・ PBDEはハウスダストに蓄積するのでこまめに掃除をする。特に子どもは床で遊んでいるときにハウスダスト接触しやすい。

・ 家具やカーシートにカバーを掛けたり表張りを交換したりする

ここまで見ていれば,それほど大変なことではないように思うのだが,次節からの論調は異なる。

カナダ政府の役割

 2006年12月,カナダ政府は化学物質管理計画を発表した。対象化学物質の中に,PBDEも含まれている。

 Environmental Canada と Health Canada はいくつかのPBDEsに対して,スクリーニング評価を行った。その結果,PBDEは野生生物や無脊椎動物に対してリスクの脅威があるとの知見を得た。

 それに対し,ヒト健康影響を発現するほどの曝露レベルではないことも確認された。

 カナダ政府は,これらのPBDEの使用と環境への放出を厳重に管理することを提案した。これにより,カナダ国内でのPBDE製造や使用・輸入が禁止になった。
  また,製品中に含有されているPBDEだけではなく,特定のPBDEをターゲットとしたさらなる規制を検討中である。

(感想)ヒトに対し,リスクを発現するレベルの濃度ではないことは認めているようだ。それに対し,生態系へのリスクが懸念されるとしている。生態系へのリスクに関しては,PBDEの環境中への放出が「コントロール」出来るのか,出来ないのかを見極める必要があったのではないか。つまり,これまで何ら規制がない時代の方が長かったわけで,その時代に環境中に放出されてきたPBDEだけを見てリスクがあると評価し規制するのは適切だろうか。今後の排出量削減の努力をフィードバックさせて順応的な管理を目指した上の行動なら理解できるが。