HBCDの魚体中濃度が減少を示している

Ismail, N., S.B. Gewurtz, et al. (2009). "Brominated and Chlorinated Flame Retardants in Lake Ontario, Canada, Lake Trout (Salvelinus Namaycush) between 1979 and 2004 and Possible Influences of Food-web Changes." Environmental Toxicology and Chemistry 28(5): 910-920
http://www.setacjournals.org/perlserv/?request=get-abstract&doi=10.1897%2F08-162.1

今年の5月に発表された環境測定結果。オンタリオ湖のマス体内中のHBCD濃度が強い減少傾向を示しているという論文。本文中では他文献を引用して,「環境中濃度は実際は上昇していなければならない,だから本測定結果は非常に疑問を持つ」というような論調。詳しくは本文中の図表を参照していただきたいが,僕の感想は以下。

  • β体とγ体の濃度が1980年あたりを境にして急激に減少している(それに対してα体は一定)。これはオンタリオ湖近くのHBCDを取り扱う工場が倒産・移転したか,環境への排出量を削減したために現れたトレンドだと推測される。
  • 1990年あたりですべての異性体に増加傾向がみられることから,この時期にHBCD製品の製造量もしくは使用量が急激に上昇したことが推測される(環境への排出率が上昇したとは,まさか考えられないので)。
  • HBCDの使用量減少と排出量削減に伴い,α体を含めすべての異性体の魚体中濃度が減少傾向にあると推測される。

なんで濃度の減少傾向がないと,こうまでも自身の研究を疑いにかかるものか。