公開書簡 中国の子供の鉛中毒は重大。しかしそれ以上に生態系はどうなってしまっているのだろうか?

国立衛生試験所所属 畝山智香子さんのブログを読んでいて,これはちょっとびっくりしすぎてしまったので,とりあえずメール回します。
中国での鉛中毒の話ですが,いやはや,こうなるまで明るみになってこないのがおかしい。
ヒトは健康影響を目視できるのですが(ヒトは訴えることもできますし),生態系はどうなっているのでしょう。

中国の鉛中毒で暴動
The Lancet
Volume 374, Issue 9693, 12 September 2009-18 September 2009, Page 868
Lead poisoning cases spark riots in China
Jonathan Watts
陝西省湖南省亜鉛と鉛の精錬工場近傍での重金属暴露を保健当局が認識して以来、少なくとも5つの工場が閉鎖された。
問題が発覚して、8月初旬に湖南省Wenpingの村民は警察車両をひっくり返したり道路標識を壊したりした。Wugangマンガン工場近傍では少なくとも1354人の子どもたちが中国の安全レベルである100 mg/Lの血中鉛濃度を超過している。
陝西省Fengxiangでは怒った保護者たちがDongling鉛亜鉛精錬会社の300mのフェンスを壊して運搬車両を破壊した。この近傍の2つの村の731人の子どもたちのうち615人が血中鉛濃度が高いと診断されている。140人以上が入院治療を受けている。
ある8才の子どもは痩せて小さく4才にしか見えないため家族か検査を受けさせたところ血中鉛濃度は239 mg/Lであった。
労働者の汚染はさらに深刻で、精錬工場で働く23才のMa Yungangは血中鉛濃度が1100 mg/Lだったため輸血を必要とした。
政府は被害者へ補償をすると約束したが保護者の怒りは収まりそうにない。

ちなみに,鉛*1のTDIは(詳細リスク評価書によると)血中鉛濃度10 μg/dL(エンドポイント:子供の中枢神経影響=IQの低下)であり,現在の日本の暴露状態は(0〜12歳児のすべての年齢において,暴露分布の95%タイルの最大値でも)血中鉛濃度が5 μg/dL以下です。
中国の安全レベルが100 mg/Lに設定されていることも驚きですが,1354人の子どもたちがそれを超過していることも驚きです。

*1:9月17日に加筆・変更