リスクを過剰に見積もってさらに下げる意味はある?

最近畝山さんのブログから引用させてもらいすぎる感があるが,非常にためになるのだから仕方ない。
畝山さんの今回の提供記事は論文紹介。
フタル酸のリスクと規制は現在どうなっていて,本当のリスクはどれくらいになっていて,今後どうすればいいか,を著者がまとめてレビュー論文として公表したものを紹介した記事。

■[論文]フタル酸のリスクと規制と公衆衛生:レビュー
Phthalate Risks, Phthalate Regulation, and Public Health: A Review
Michael A. Kamrin
Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B: Critical Reviews, 1521-6950, Volume 12, Issue 2, 2009, Pages 157 174
この原稿がダウンロードできる
http://www.acsh.org/include/docFormat_list.asp?docRecNo=1013&docType=0
フタル酸については当初問題となったのは医療用具からのDEHPとおもちゃのDINPであった。当初、リスクは低いがさらなるデータは有用であろうという評価がなされ、各国で過剰暴露を防ぐための規制や対策が行われた。結果として人の暴露量は低下していることがバイオモニタリングデータが明らかにしている。各種動物実験などのデータからも現行のヒト暴露量は有害影響がある可能性のある濃度よりはるかに低く、これ以上の規制による公衆衛生上のメリットはほとんど無い。

”「フタル酸のリスクは良く分からないから(でもほとんど小さいだろうとは心の片隅では誰もが思いながら)さらなる調査を必要とする」くらいなら「規制して市場から排除してしまった方がリスクはなくなるし,調査のための費用も必要なくなるし一石二鳥だ」”っていう連鎖みたいなものはいつまで続くのだろう?
意思決定者から言わせれば,「これ以上の規制による公衆衛生上のメリットはほとんど無いかもしれないが,これ以上規制することによる国民の安心と安全は守られている」というところだろうか。しかし国民の利潤を最大化するという目的から言えば,本当に規制過剰は正しいのだろうか?規制には莫大なお金がかかるわけだし,フタル酸の代替物が安心だという保証はないし。。。
もう少し,事前に分かる情報で構わないので,「コスト」で議論してもいいのではないだろうか。簡単な試算で構わないので。そうすれば,この程度のリスクにどれだけ多くのお金をかけようとしているか,を白日のもとにさらして一般市民にも考え直してもらうことができるはず。