AMAPレポートの論文版

Science of The Total Environmentから,AMAPのレポート(2009)の論文バージョンが出た。どうやらこの論文をもとにしてレポートが作られた模様。

Cynthia A. de Wit, Dorte Herzke, Katrin Vorkamp
Brominated flame retardants in the Arctic environment — trends and new candidates
Science of The Total Environment (Article in Press)
http://dx.doi.org/10.1016/j.scitotenv.2009.08.037

HBCDのところを抜き出してまとめると,

  • HBCDは北極域に偏在しており,γ体の濃度は大気中で,α体の濃度は生体中で支配的である。海底質ではα,β,γがそれぞれ等割合存在している。
  • 3〜7臭素化体PBDEsとHBCDは,各媒体(大気,底質,生体)や地域に因るものの,濃度一定または増加傾向を示しているが,北極域中で一様な傾向を示すものはない。
  • PBDEsとHBCDの空間的な傾向でまとめると,PCBsで以前見られたのと同様に,グリーンランド東部とすバーバル諸島の海鳥や海獣から高濃度が検出された。この傾向は,西欧や米国東部が大きな汚染発生源となっており,大気経由や海水経由の長距離移動が原因であることが示唆される。
  • 3〜6臭素化体PBDEsとαHBCDは北極域の食物連鎖中で生物濃縮している。
  • PBDE及びHBCDの陸生生物生体中の濃度は比較的低いが,アラスカのシャチやバレンツ海から渡ってきたシロカモメなどの海域の上位捕食者で比較的高い。ちなみに,高濃度地域は人口密度の高い地域で見られる。