もしも,BSE全頭検査が「事業仕分け」の対象となったなら…

日経BP関連にFood Scienceというページがある。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/index.jsp
食の機能と安全を考える専門ウェブサイトとして食の安全を巡る諸問題について,食に関わるあらゆる専門家に向けて最新情報を提供している(ほとんど有料,部分的に無料)。僕も愛読者の一人。
FoodScienceは週に1回Newsメールを送付している。つい先ほども流れてきたのだが,これが結構傑作だったのでご紹介する(良い意味です)。久々にメールを見て笑ってしまった。
Webにも掲載されるはずだが,今のところ掲載はされていない。19日昼にはアップされていることと思うが。。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/mail_itiran.jsp
本Newsのコラムは毎回,Webmasterの中野栄子さんが書かれている(と勝手に思っている)。
以下,コラムをそのままご紹介する。

 テレビのニュース番組で放映される「事業仕分け」の様子を、連日興味深く見ています。行政が行う事業に無駄がないか、民間の有識者を加えて、公開で事業の存続性を議論するのです。これまで、“採算性”という言葉はあまり使われてこなかった行政が行う事業に、メスが入り、しかも誰もが分かるように公開で進めるということは画期的なことだと思います。

 例えば、BSE牛海綿状脳症)の全頭検査は、今では国の事業ではなく、各都道府県へ移管されていますが、仮に国の事業だとして、事業仕分けの俎上に乗ったことを想像してみました。

仕分け人:全頭検査はBSE対策だということですが、全部の牛を検査することで、BSEの発生を防ぐ絶対的な効果はあるのですか?

役所:若い牛を検査しても、潜在的BSEに感染している牛が検査をすりぬける場合があるので、全部の牛を検査したからといって、絶対的な安全が確保されるわけではないのです。つまり、全頭検査をしても、しなくても同じであり、全頭検査をしても意味がないのです

仕分け人:え、そうなんですか! では、意味がないのに、なぜ全頭検査をするんですか?

役所:日本で最初にBSEが発生したとき、国民がパニックに陥りました。そのとき、日本では世界一厳しい全頭検査をするので、安心してください」と言って全頭検査を始めました。それによって、やっと落ち着きを取り戻したのです

仕分け人:なるほど。検査に意味はなくても、国民に安心してもらうという点においては意味があるのですね。ちなみに、どのくらい費用がかかっているのですか

役所:ある経済学者が試算したところによると、1人の日本人が牛肉を食べたことによってvCJD(変異型フロイツフェルトヤコブ病)で死ぬのを、5兆円かけて防いでいることになるそうです

仕分け人:……全頭検査をやめると、BSE対策は何もやっていないといことになるのですか?

役所:そんなことはありません。特定危険部位の除去、飼料規制(肉骨粉給餌の禁止)というBSE対策をして効果を上げており、国際的にも認められています

仕分け人:わかりました。結論を申し上げます。全頭検査という事業は不要と見なし、廃止します

まあ,当たり前のごとく廃止されるでしょう。むしろお金で安全を買うどころか(安全はもとから確保されているので),明らかに安心を買いにいっているのですから,これほど変な政策もないでしょう。
よぉし,同様に難燃剤の事例に落とし込んで“もしも”シリーズを…とふと思ったりもしたけれど,やっぱりやめた。“もしも”で考えたって何も生まれない。なんだか虚しさを覚えるのは自分だけだろうか。