規格が研究開発の足かせになってはいないか?

エレクトロニクス実装学会誌に以下の様な論文を見つけた。

小泉徹 (2009). "開発における自由と制約(1) 企画や認証規定が新商品開発の足かせになってはいないだろうか?." エレクトロニクス実装学会誌 12(2): 159-162.

例として“難燃グレードの試験”を取り上げ,以下の点を問題提起している。

規格にある試験方法を用いて最も難燃性に優れたグレードに判定されることが,材料開発に必須なのだろうか?

このような問いをしているところから分かるように,著者は NO だと考えている。要求仕様や契約条件の場面では,「難燃性は一番燃えにくいグレード(の材料・製品)であること」必須かつ当然として対応しなければならない場面が多いとのことで,材料開発者は苦労が多いようだ。
確かに,今の日本においては「何事にも最良のグレードを求める文化」が根本にあると言えるのかもしれない。

材料や製品のトータルな性能バランスが何よりも求められているにも関わらず,一部の有名な規格で伝承された項目が必要以上に重要視されているために,その特性実現にムダな時間や工数が投入されていることはないでしょうか?

基本的に電気電子機器は自社規格というものを各自が策定しており,各部位で,規格の数ランク以上の性能を開発者に対して要求している。しかしながら,

特定の項目にとらわれすぎた結果,その他の項目では良い性能を持ちながら,せっかくの新規開発品が市場に登場する道が塞がれることはないでしょうか?

基本的に環境特性と安全性能はトレードオフの関係にあることから,これまでのように潔癖主義で突き進んでいては企業活動が成り立たなくなっていく。

新規開発品の特性を販売戦略としてアピールする方法として,単に有名な耐燃焼性規格をクリアしたことをカタログに大きく記載することで事足りた時代は終わっています。

同様に,「ハロゲンフリー」というキャッチフレーズが欲しいがために,あらゆる製品からハロゲンを抜こうとする戦略は,むしろ利益とは無縁の方向に向かっている可能性があるのではないだろうか。「環境対応と安全設計は原則的にトレードオフ」なのだから。