EPA 既存化学物質アクションプラン立ち上げ


明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。


さて,2009年が終わりになりかけた時,EPAが新たな政策を立ち上げたようだ。
まだアクションプランの内容をよく理解できてはいないのだが,どうやらTSCAでは遅々として進まなかった化学物質の規制を早めるため,包括的なアプローチで評価を行っていく,ということらしい。欧州日本に続いて,米国も新たな動きを見せるようだ。

EPA Announces Actions to Address Chemicals of Concern, Including Phthalates: Agency continues efforts to work for comprehensive reform of toxic substance laws
Release date: 12/30/2009

8万種もある既存化学物質のうち,以下の4物質群がまずは取り上げられるとのこと。

これらの化学物質は様々な要因(以下7点)を考慮した上で決定されたらしい。
①persistent, bioaccumulative, and toxic,②high production volume chemicals,③chemicals in consumer products,④chemicals of particular potential concern for children's health because of reproductive or developmental toxicity,⑤chemicals subject to review and potential action in international forums,⑥chemicals found in human blood in biomonitoring programs,⑦chemicals in categories generally identified as being of potential concern in the new chemicals program
それぞれの化学物質に対するアクションプランの内容は以下のHPから閲覧できる。

Existing Chemicals Action Plans
http://www.epa.gov/oppt/existingchemicals/pubs/ecactionpln.html

ここではPBDEsを取り上げる。EPAはこれまでのPBDEsに関する科学的知見,規制状況などを考慮し,以下5つのアクションプランを提案した。

  • ① PentaBDE及びOctaBDEが付加されている材料を輸入する際に90日以上前に届け出を要求するという規制提案(EPAが独自に評価する or 禁止・制限の設定を考慮するため)。2010年には公表したい。
  • ② DecaBDEの製造及び輸入の段階的禁止をサポート及び推奨する。
  • ③ 段階的禁止が完了したらDecaBDEにSNURを適用し(エッセンシャルユースは除外),完了出来ていないと判断できるときは,DecaBDEを含有している製品を製造・使用する際の人健康や生態への影響の評価を求める。(井上:誰に求める,かは不勉強のため分かりません)
  • ④ 商用PBDEもしくはPBDEコンジェナーを,人健康や生態へのリスクが懸念される化学物質のリストに入れる。2010年秋に公表したい。
  • ⑤ DecaBDEの代替物質評価を行う。2010年の初春から取り掛かる予定。効率性,利用可能性,コスト,ハザードレベルを考慮する。(井上:どこかの文章に『As part of this encouragement, EPA intends to develop Design for the Environment and Green Chemistry alternatives analysis for c-decaBDE to aid users in selecting suitable alternatives.』とあった。DfEやグリーンケミストリーを全面に押し出した代替物質評価を行うと捉えて良い?こういった代替評価は見たことないので,ぜひとも定量的にバシッと出してもらえないだろうか)

気になった箇所が2点。
1点目。代替物質の評価って,基本的に規制をするまえに行うものだと思うのだが。DecaBDEの段階的禁止を大々的に取り上げ,禁止までのロードマップをきっちりと作ってから『さあ,代替評価しようか』ではこれまでの社会経済分析のステップと矛盾しないのだろうか?
2点目。どこに記述されていたか忘れたが,『2004年に米国ではOctaとPentaの使用を禁止したにも関わらず人血液中のOcta及びPentaの濃度が上昇している理由は,それらが付加されている製品の輸入とDecaBDEの低臭素化である』と書いてあったりしたのだけど,低臭素化問題は全然解決していないのでは?EPA程の影響力を持った機関がこの“重要な”ポイントを誤認すると,世の中の動きはガラッと変わってしまう。

そして最近良く思うのは,EUリスクアセスメントを行う意味はあるのか,という点。EUリスクアセスメントの結果に法的な拘束力は存在しないため,各国とも遵守する必要などないのだから当たり前といえば当たり前なんだけど,“遵守”しないにしても“重要視”したりしないのかなぁ。